産室の夜明

与謝野晶子

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硝子の外のあけぼのは 青白き繭のここち…… 今一すぢ仄かに 音せぬ枝珊瑚の光を引きて、 わが産室の壁を匍ふものあり。 と見れば、嬉し、 初冬のかよわなる 日の蝶の出づるなり。 ここに在るは、 八たび死より逃れて還れる女―― 青ざめし女われと、 生れて五日目なる 我が藪椿の堅き蕾なす娘エレンヌと 一瓶の薔薇と、 さて初恋の如く含羞める うす桃色の日の蝶と…… 静かに清清しき曙かな。 尊くなつかしき日よ、われは今、 戦ひに傷つきたる者の如く 疲れて低く横たはりぬ。 されど、わが新しき感激は 拝日教徒の信の如し、 わがさしのぶる諸手を受けよ、 日よ、曙の女王よ。 日よ、君にも夜と冬の悩みあり、 千万年の昔より幾億たび、 死の苦に堪へて若返る 天つ焔の力の雄雄しきかな。 われは猶君に従はん、 わが生きて返れるは纔に八たびのみ 纔に八たび絶叫と、血と、 死の闇とを超えしのみ。

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