若い渡守
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長者町の浜と
砂丘との間を漕ぐ
一人の青年の渡守、
その名は田中文治さん。
文治さん、
あなたは寡言です、
あなたは人の十言に対して
やつと一言を答へます、
重い、重い、鉄のやうな一言を。
文治さん、
あなたは人が礼を述べても
大して嬉し相な表情を見せません、
勿論、世辞や愛想は。
文治さん、
あなたは兵役から帰つて来た人です
それで居て、少しも都会じみず、
日焼の黒い顔と、
百姓の子の生地とを保つて居る。
文治さん、
あなたは避暑客のために、
この夏中、此町の青年と一緒に、
渡守の役目を引受けて居る。
文治さん、
あなたは三日置の自分の番の外に、
仲間の者の課役をも助けて、
殆ど毎日、逞ましい裸体で、
炎天の下に櫓を採つて居る。
文治さん、
あなたは寡言です。
けれど、その銅像のやうな全身は
未来の偉大な人道を語ります。
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