闇に釣る船
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真黒な夜の海で
わたしは一人釣つてゐる。
空には嵐が吼え、
四方には渦が鳴る。
細い竿の割に
可なり沢山に釣れた。
小さな船の中七分通り
光る、光る、銀白の魚が。
けれど、鉤を離すと、直ぐ、
どの魚もみんな死つてしまふ。
わたしの釣らうとするのは
こんなんぢやない、決して。
わたしは知つてゐる、わたしの船が
だんだんと沖へ流れてゆくことを、
そして海がだんだんと
深く険しくなつてゆくことを。
そして、わたしの欲しいと思ふ
不思議な命の魚は
どうやら、わたしの糸のとどかない
底の底を泳いでゐる。
わたしは夜明までに
是非とも其魚が釣りたい。
もう糸では間に合はぬ、
わたしは身を跳らして掴まう。
あれ、見知らぬ船が通る……
わたしは慄く……
もしや、あの船が先きに
底の人魚を釣つたのぢやないか。
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