夏夜

土井晩翠

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靜けき夏の夜半の空 遠き蛙の歌聽けば 無聲にまさるさびなれや 眠を誘ふ水の音 心しづかに流るれど 夕月山に落ち行けば 影を涵さんよしもなし。 星夜の空の薄光り 心を遠く誘ひつゝ すゞしくそよぐ風のねは 神のかなづる玉琴に 觸れてやひゞく天の樂、 昨日の夢と悲みし 浮世の春は替はれども 見ずやとこよの春の花 散らでしぼまで大空の 星のあなたにほゝゑむを。

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