戀の園
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『みだれてくらき深海の
底にねむりし身もこよひ、』――
眞珠小百合の唇に
はじめてふれて、
『君を戀ふ』と。
産めどもふかく沈めつる
海はしんじゆの母なれど、
母をも棄ててこの園に
ああまた何ぞ、
『君を戀ふ』と。
小百合は知るや、慕ひよる
眼ざしは天にふさへども、
胸にはゆらぐ海の音の
うれひやいとど
『君を戀ふ』と。
あふれて月は雲に入り、
雲は光にとくるとき、
小百合の園の香に映えて
影ゆめふかげ、
『君を戀ふ』と。
しんじゆの清き身ならずば
小百合なにかはくちづけの
あまきにほひもまじへじを、
さてもせつなげ、
『君を戀ふ』と。
夜はひとやのやみならで
今宵月照る戀の園、
やすらひの戸もかげやけど、
きかずやあはれ、
『君を戀ふ』と。
嗚呼沈みしも海のそこ、
戀ふるも深きこころには、
小百合なさけのくちづけも
あさきやさらに、
『君を戀ふ』と。
戀の火焚けば雲もはた
濤もひとつの火のいぶき
光の干潟、――月もまた
わづらへどなほ、
『君を戀ふ』と。
『燄ながれて戀にゆき、
おもひはもゆる身ぞこよひ、』――
眞珠小百合の花びらの
口にくちづけ、
『君を戀ふ』と。
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