新鶯曲
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法吉郷、郡家正西一十四里二百卅歩神魂命御子、宇武賀比比賣命、法吉鳥化而飛度、靜坐此處、故云法吉。
出雲風土記
わが姉うぐひす、いかなれば
野を、また谷を慕ふ身と、
鳥に姿をかへにけむ、
緑は匂ふそのつばさ。
われは永劫海の精、
きのふのむつみ身にしめて、
巖群渚おほ浪の
みだれに胸を洗はむか。
わが姉しばしふりかへり
北海寒き磯を見よ、
凍えて墜つる雲の下
ただあぢきなきこの恨。
われは悲愁つきがたく
沙に僵れ嘆くとき、
深きおもひもわたづみの
とよもしにこそかくれけれ。
わがあね、鶯、ほのかなる
ほほゑみほめて、世の人は
鳴く音しらべの汝がこゑに
愁ひ痛みも忘るべし。
われは迷へる海の精、
貝の殼なる片葉もて、
きのふぞ二人大神に
捧げにけるを生藥、――
わが姉、鶯、なにすとて、
大虹ふかき彩に照る
殼のさかづきうちすてて、
すてて惜まぬ歌の聲。
われは今なほ海の精、
汝がゆくへをば思ひやり、
巖にのぼり、浪にぬれ、
夜もまた晝もかなしまむ。
鶯、鶯、わが姉よ、
春に遇ひたる樹間より、
しばしは荒き遠海の
昔をしのびいでよかし。
われは朽ちゆく海の精、
なげきのこゑも消ゆるまを、
いよいよ春に時めきて
汝がしらべこそ清からめ。
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