月しろ

蒲原有明

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淀み流れぬわが胸に憂ひ惱みの 浮藻こそひろごりわたれ黝ずみて、 いつもいぶせき黄昏の影をやどせる 池水に映るは暗き古宮か。 石の階頽れ落ち、水際に寂びぬ、 沈みたる快樂を誰かまた讃めむ、 かつてたどりし佳人の足の音の歌を その石になほ慕ひ寄る水の夢。 花の思ひをさながらの祷の言葉、 額づきし面わのかげの滅えがてに この世ならざる縁こそ不思議のちから、 追憶の遠き昔のみ空より 池のこころに懷かしき名殘の光、 月しろぞ今もをりをり浮びただよふ。

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