落葉行

北原白秋

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 ひとりゆくこの山岨は落葉のみ溜り湿れり。落葉踏みつつ行けば、いづく飛び鵯高音うつ。かさこそり、櫟の枯葉わがかたへまた声立てぬ。日おもての草崖薄、その穂にも落葉かかれり。草紅葉まだ温くけれど、その上にも落葉うごけり。向ひ山、こなたの小丘、見るものはみな枯木のみ。空ぐるま軋るを見れば、上岨を尻毛振る赤馬、ひようひようと吹かれゆく馬子、みな寒き冬のものなり。渓の上の小茶屋の椅子も紅葉積み、その渓かけて、はらはらと落葉ちりゆく。山窪の幾むら藁屋、水ぐるま廻れる見れば、ほとほとに水も痩せたり。欅原ただ目に寒く、入りゆけば陽の目薄きに、雨のごとちる落葉あり。よく見ればいよいよ繁し。声立てていよいよ寂し。ほうほうと立てる雑木の岨路ゆき、別れ径ゆき、当処さへ果てはわかねど、風のまま歩みのままに、行き行けばただ落葉なり。前うしろただ落葉なり、かさこそと、また、はらはらと、空にも地にも声ばかりして。

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