立秋(『思ひ出』収録)

北原白秋

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柳河のたつたひとつの公園に 秋が來た。 古い懷月樓の三階へ きりきりと繰り上ぐる氷水の硝子杯、 薄茶に、雪に、しらたま、 紅い雪洞も消えさうに。 柳河のたつたひとつの遊女屋に 薊が生え、 住む人もないがらんどうの三階から きりきりと繰り下ぐる氷水の硝子杯、 お代りに、ラムネに、サイホン、 こほろぎも欄干に。 柳河のたつたひとりの *NOSKAI は しよんぼりと、 月の出の橋の擬寶珠に手を凭せ、 きりきりと音のかなしい薄あかり、 けふもなほ水のながれに身を映す。 「氷、氷、氷、氷…………」 * 遊女、方言。

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