Sine qua non
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そなたの睡眠は、夜つぴて白く窓を埋める
片脚あげた 噴き上げの鶴よ。
わたしは読み飽いた「聖ヨハネ祭の夜」の頁をたたみこんで、暗い一閑張の下に、さて閉ぢようとして気づいた。
その夜、なにせ、季節は冬から孟春に、とび超えようといふのだ。(くらい天の一方で、間遠に神々の跫音がゆききする――)
わたしの中のわたしが、しばし恍惚とじぶんを置きわすれて、往つてしまふ。まづ、それをとり戻さなければならん。
窺きガラスのなか、東方が白む頃あひといふに、欹てる耳のうへで逸はやく、
―― Chio, chio, chio, chio-chinks
chio, chio, chio, chio-chinks …
暁は迅い。窓はまだ睡りたりないのだ。
わたしもまた睡りたりん。
歌ごゑは、蝋燭ほどの月あかりの下びに。灌木のしげみのあちら側に。
どこか「夜啼鶯」とでもいひたいが、――湖どりと覚しいそのこゑは囁きつゞける。張りのある、わかい調子で。
(ひょいとヒマラヤ杉を、湖かぜが煽つてとほる。ひそひそ噺のかたちで。…)
嚔 ひとつ
ふいに、
わたしの前にゐた暁ちかい夜が、ぐつたり息絶える。
なんといふ いい夜!
わたしの中のわたしが呟く
―― Sine qua non と。
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