この道をも私は通る

室生犀星

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これはどうしたのだ この闇のなかにうぢうぢとうごいて 銀貨一枚で裸体にもなる女等 君はこのやうな混濁の巷で 聖母マリアのやうな 美しい顔をどうするつもりだ 刷りへらした活字のやうな肢体は 釘のやうに歪つたくちびるは その毒毒しい人を食つたやうな調子は 永久世の中へ出て行かれなくなるまで 稼いでも稼いでも 貧乏してゐる君達 手も足もすりへらして終ふまで たましひをめちやくちやに傷めるまで しぶかみのやうに くしやくしやになつた肉体! 君だちを背景にしてゐる この人類の生きやうはどうだ いろいろの若い熱いたましひが 君らの傍にゐることを望んでゐることはどうだ ああ この道を通るにも 自分は涙を感じる 一歩そとへ出れば 恐ろしい都会の大街道 家に居ればふしぶしのいたむやうな稼ぎやう いまこそ私もこの道を通る お前達の送る毒の花をも 自分は優しく接吻して上げる 「私が神様を離れてどうして生きてゐられませう。」早口に力を入れて彼女は囁いた。急に輝きを帯びた目をちらと彼に投げて。そしてラスコオリニコフの手を堅くしめつけた。 ドストエフスキイ

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