鷲の詩

室生犀星

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自分はまだ愛を受けない 自分はまだ触手されたことがない 自分は正当に万人とともに孤独だ 自分は庭へ出て 草花に水をやつたり 柿の木の下に椅子を置いたり そこに座して風をきいたり 高い空を眺めたりしてゐる 自分が草花に水をやるとき 自分は新らしいものらの 光の 自分の心にのりうつることを知る 凜然とした あれらのよき匂ひと姿勢とは 僕のゆがんだところを正しくする 僕の心をいとやさしくする こなれて僕の英気となるのだ 僕を活溌にするものだ 僕の顔いろをよくしてくれるものだ 毎日毎日鷲のやうな孤独を感じ 鷲のやうに凡てから離れ住んで いま此等の正しきものらに触手する しみじみ讃嘆する 自分はいまの年齢によつて初めて 草木の値を知るのだ 自分の知らなければならないものらは この世にどれだけ多くあることだらう あせりにあせり いま此処を通る

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