或る朝の印象

千家元麿

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あゝ朝 どの家々もがら明きのやうに靜かだ 皆んな何處かへ行つて仕舞つたのでは無いか 亂雜に家々ばかりが蜘蛛の居ない巣のやうに 澤山空に向つて淋しく竝んで居る。 餘りに明るい光りが暗さを生むやうに 淋しいうつろな家々の近所で 勇しい雀ばかりが啼いてゐる。 ゆつくりと、この朝の靜かさに驚いたやうにつゝましく啼いてゐる。 だん/\啼く音が殖えてゆく。 勢ひも増して行く、羨しくなる程恐れを知ら無いで雀は啼いてゐる ついと一羽が、 高い目のまはるやうな高い電線に飛んで來て とまり、輕く調子をとつて姿勢を正した。 大きな淋しい空に對して鋭い對照をなして、憎いほど大膽な雀よ。 恐れを知らない雀よ。 同時にあとからあとから、屋根を離れて幾羽も飛んで來た。 然うして枝渡りして彼はどこかへ行く。 どこへ行くのか。 少しぼつちの群れで。

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