格鬪

千家元麿

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或る夜、月は傾き落ちて 空には春が來るらしい底知れ無い青い光の反射の中に 星は紅色の魚のやうに 落ち相に低くたゞよつて居た。 自分は一人で烈しい霜解け道を惱んで歩いた まるで登山でもする樣に 二三寸の土の上を上つたり下りたりした。 自分は突然大地と爭つてゐる愉快を感じた 自分は可笑しくなつて笑つたり、怒つたりし乍ら 長い間かゝつて一つ道を歩いて行つた。 至る處で大地とこね合つた。 笑ひ崩れ乍ら、倒れたり、起き上つたり 格鬪し乍ら歩いた。 家へ歸つても尚自分は笑つてゐた。

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