立ち話し

千家元麿

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急いで家へ歸つて來る途中で もう暗かつた。妻に出會つた。 二人は用を話し合つた。 妻は自分に子供を注意した 成程、見れば妻の顏のうしろに ねんねこの蔭にしつかりと窮屈な位包れて、 枝になつた果實のやうにかつちり引きしまつた小さな顏が、 默つて笑つて居た。 例へやうもない可愛ゆいおとなしい顏よ すつかりいゝ氣持になつてゐる滿足顏だ。 自分が笑へば、靜かに笑ふ、その眼の光り、 りかう相な默つた表情。いゝところで出會つた。 さて又自分は妻と話のつゞきをする。 もう子供の事は忘れて、 話が絶えて又思ひ出して見れば 靜かに笑つて二人の話を聞いてゐる 母の顏のうしろの一寸氣がつかない小さな顏よ、 葉蔭の花か果物のやうな 滿足しきつたぜい澤な顏、 可愛ゆい、小さな鋭い顏、 ではさよなら、行つて御いで さよなら、笑つて居ますよ。 (十一月三日)

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