夕暮(『自分は見た』収録・同題第2篇)

千家元麿

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夕暮 天上は騷ぎだ。 太陽が沈む波動で 上騰して居た空氣が穴を明ける。 その中で空は青い眼を閉ぢる樣に 衰へ乍ら、幽かにふるへて此世から遠退く。 今見てゐるのは幻のやうに。 地上は靜かだ 擴大された道路の上に 人間は安らかに、靜かに歩いて居る。 佇んだり、しやがんだり、歩いたりして居る ある可き處にある樣に 眞實に美くしくいろ/\の形をして居る。 そこへ寒い風が落ちて來て至らぬ隈も無く吹き廻しては消えて行く。 攫れたやうに人が居なくなる。 空は見る見る燃えつきて暗くなり すつかり眼を閉ぢる。

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