鷦鷯の歌

薄田泣菫

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吹革祭の日は寒く、 鍛冶が妻ぞ唯ひとり、 ひねもす窓に居凭る時、 軒端づたひにこそつきて、 掛菜をそそる音きけば、 鷦鷯來と知られけり。 樵夫の娘爪先を 爐にあたたむる雪の朝、 いきふく聲を洩れ聞きて、 情郎こそ呼べと駈けいでて、 あはれや軒に立ちくらし、 凍えて泣きし談あり。 今朝しも山に分け入りて、 谷の小蔭に唯一羽、 鋭き嘴に萱さきて、 巣をあむ振を認めしが、 かへりて妹にささやくに、 なほわが聲をはばかりぬ。 なう鷦鷯木づたひに ひとり興がる歌きけば、 夏の日なかの野の鳥の 誇る羽振も忘れはて、 簑蟲啄みて飛びてゆく 汝が姿をぞ愛でしるる。

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