沙彌がうたへる歌

薄田泣菫

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華籠に盛れる木蓮は 香爐の灰の冷ゆるに 脆く落ちて行春の ながき愁を止めぬ。 春の日ながのわざくれ、 鐘擣男醉ひしれ、 時の數を忘るとも、 ほほゑみてのみあれかし。 そぞろ歩きの女に、 春の齡を問へるに、 かをり高き羅衣の 袂をふりて急ぎぬ。 今鐘樓に上り來て、 遠く浮世を望めば、 百里途もつくる方、 春はかなく落ちんとす。 ああ若きは酒くみて、 甘き夢に興がるを、 獨り冷えし堂に入り、 破れしみ經や讀むべき。 惡の神蠱わざに、 われを石とせよ‥‥ さば永劫朽ちもせで、 春戀石と名をや得め。

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