法の夕
本文の表示
夕日の國は野も山も、その「平安」や「寂寥」の
黝の色の毛布もて掩へる如く、物寂びぬ。
萬物凡て整ふり、折りめ正しく、ぬめらかに、
物の象も筋めよく、ビザンチン繪の式の如。
時雨村雨、中空を雨の矢數につんざきぬ。
見よ、一天は紺青の伽藍の廊の色にして、
今こそ時は西山に入日傾く夕まぐれ、
日の金色に烏羽玉の夜の白銀まじるらむ。
めぢの界に物も無し、唯遠長き並木路、
路に沿ひたる樫の樹は、巨人の列の佇立、
疎らに生ふる箒木や、新墾小田の末かけて、
鋤休めたる野らまでも領ずる顏の姿かな。
木立を見れば沙門等が野邊の送の營に、
夕暮がたの悲を心に痛み歩むごと、
また古の六部等が後世安樂の願かけて、
靈場詣、杖重く、番の御寺を訪ひしごと。
赤々として暮れかゝる入日の影は牡丹花の
眠れる如くうつろひて、河添馬道開けたり。
噫、冬枯や、法師めくかの行列を見てあれば、
たとしへもなく靜かなる夕の空に二列、
瑠璃の御空の金砂子、星輝ける神前に
進み近づく夕づとめ、ゆくてを照らす星辰は
壇に捧ぐる御明の大燭臺の心にして、
火こそみえけれ、其棹の閻浮提金ぞ隱れたる。
ログインすると、お気に入り登録や選集への追加ができます。
ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。
法の夕の談話
疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。
まだ投稿はありません。
法の夕に寄せられた作品
詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。
まだ投稿はありません。
批評・感想 0
作品の表現や構成を検討し、根拠を示しながら評価・講評する場所です。
まだ批評・講評はありません。
ログインすると批評・講評を書けます。