畏怖

上田敏

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北に面へるわが畏怖の原の上に、 牧羊の翁、神樂月角を吹く。 物憂き羊小舍のかどに、すぐだちて、 災殃のごと、死の羊群を誘ふ。 きし方の悔をもて築きたる此小舍は かぎりもなき、わが憂愁の邦に在りて、 ゆく水のながれ薄荷莢蒾におほはれ、 いざよひの波も重きか、蜘手に澱む。 肩に赤十字ある墨染の小羊よ、 色もの凄き羊群も長棹の鞭に 撻れて歸る、たづたづし、罪のねりあし。 疾風に歌ふ牧羊の翁、神樂月よ、 今、わが頭掠めし稻妻の光に この夕おどろおどろしきわが命かな。

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