曲り角

山之口貘

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産めよ 殖やせよの時勢にふさわしく 国策に副うたと女房は言う たべものなどにしてみても 好きなわさびを当分はたべないと言い 小魚なんぞは骨ごとたべてしまう 女房の言うこと 為すことには 私的な味がなくなって おなかばかりが目立ってきた あるとき 僕はながめていた 桜の木のある曲り角から おおきなおなかが現われた むろんそれは一目みて 産めよ殖やせよの見事な国策とわかつたが 女房の姿とわかったのは しばらく経ってからのことみたいで おなかに遅れてかなしそうに 息を喘いで現われて来た その眼 その鼻 見てわかった

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