朝日の前

与謝野晶子

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あはれ、日の出、 山山は酔へる如く、 みな喜びに身を揺りて、 黄金と朱の笑まひを交し、 海と云ふ海は皆、 虹よりも眩ゆき 黄金と五彩の橋を浮べて、 「日よ、先づ 此処より過ぎたまへ」とさし招き、 さて、日の脚に口づけんとす。 あはれ、日の出、 万象は 一瞬にして、奇蹟の如く すべて変れり。 大寺の屋根に 鳩のむれは羽羽たき、 裏街に眠りし 運河のどす黒き水にも 銀と珊瑚のゆるき波を揚げて、 早くも動く船あり。 人、いづこにか 静かに怠りて在り得べき。 あはれ、日の出、 神神しき日の出、 われもまた かの喬木の如く、 光明赫灼のなかに、 高く二つの手を開きて、 新しき日を抱かまし。

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