明日(『晶子詩篇全集』収録・同題第1篇)

与謝野晶子

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明日よ、明日よ、 そなたはわたしの前にあつて まだ踏まぬ未来の 不可思議の路である。 どんなに苦しい日にも、わたしは そなたに憬れて励み、 どんなに楽い日にも、わたしは そなたを望んで踊りあがる。 明日よ、明日よ、 死と飢とに追はれて歩くわたしは たびたびそなたに失望する。 そなたがやがて平凡な今日に変り、 灰色をした昨日になつてゆくのを いつも、いつもわたしは恨んで居る。 そなたこそ人を釣る好い香の餌だ、 光に似た煙だと咀ふことさへある。 けれど、わたしはそなたを頼んで、 祭の前夜の子供のやうに 「明日よ、明日よ」と歌ふ。 わたしの前には まだまだ新しい無限の明日がある。 よしや、そなたが涙を、悔を、愛を、 名を、歓楽を、何を持つて来ようとも、 そなたこそ今日のわたしを引く力である。

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