冬を憎む歌

与謝野晶子

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ああ憎き冬よ、 わが家のために、冬は 恐怖なり、咀ひなり、 闖入者なり、 虐殺なり、喪なり。 街街の柳の葉を揺り落して、 錆びたる銅線の如く枝のみを慄はしめ、 園の菊を枝炭の如く灰白ませ、 家畜の蹄を霜の上にのめらしめて、 ああ猶飽くことを知らざるや、冬よ。 冬は更に人間を襲ひて、 先づわが家に来りぬ。 冬は風となりて戸を穿ち、 縁よりせり出し、 霜となりて畳に潜めり。 冬はインフルエンザとなり、 喘息となり、 気管支炎となり、 肺炎となりて、 親と子と八人を責め苛む。 わが家は飢ゑと死に隣し、 寒さと、※と、咳と、 ※の香と、汗と、吸入の蒸気と、 呻吟と、叫びと、悶絶と、 啖と、薬と、涙とに満てり。 かくて十日……猶癒えず ああ我心は狂はんとす、 短劔を執りて、 ただ一撃に刺さばや、 憎き、憎き冬よ、その背を。

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