伊豆の海岸にて

与謝野晶子

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石垣の上に細路、 そして、また、上に石垣、 磯の潮で 千年の「時」が磨減らした 大きな円石を 層層と積み重ねた石垣。 どの石垣の間からも 椿の木が生えてゐる。 琅玕のやうな白い幹、 青銅のやうに光る葉、 小柄な支那の貴女が 笑つた口のやうな紅い花。 石垣の崩れた処には 山の切崖が 煉瓦色の肌を出し、 下には海に沈んだ円石が 浅瀬の水を透して 亀の甲のやうに並んでゐる。 沖の初島の方から 折折に風が吹く。 その度に、近い所で 小さい浪頭がさつと立ち、 石垣の椿が身を揺つて 落ちた花がぼたりと水に浮く。

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