三つの路
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わが出でんとする城の鉄の門に
斯くこそ記るされたれ。
その字の色は真紅、
恐らくは先きに突破せし人の
みづから指を咬める血ならん。
「生くることの権利と、
其のための一切の必要。」
われは戦慄し且つ躊躇らひしが、
やがて微笑みて頷きぬ。
さて、すべて身に著けし物を脱ぎて
われを逐ひ来りし人人に投げ与へ、
われは玲瓏たる身一つにて逃れ出でぬ。
されど一歩して
ほつと呼吸をつきし時、
あはれ目に入るは
万里一白の雪の広野……
われは自由を得たれども、
わが所有は、この刹那、
否、永劫に、
この繊弱き身一つの外に無かりき。
われは再び戦慄したれども、
唯だ一途に雪の上を進みぬ。
三日の後
われは大いなる三つの岐路に出でたり。
ニイチエの過ぎたる路、
トルストイの過ぎたる路、
ドストイエフスキイの過ぎたる路、
われは其の何れをも択びかねて、
沈黙と逡巡の中に、
暫く此処に停まりつつあり。
わが上の太陽は青白く、
冬の風四方に吹きすさぶ……
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