夏日礼讃

与謝野晶子

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ああ夏が来た。この昼の 若葉を透す日の色は ほんに酒ならペパミント、 黄金と緑を振り注ぎ、 広く障子を開けたれば、 子供のやうな微風が 衣桁に掛けた友染の 長い襦袢に戯れる。 ああ夏が来た。こんな日は 君もどんなに恋しかろ、 巴里の広場、街並木、 珈琲店の前庭、Boi の池。 私も筆の手を止めて、 晴れた Seine の濃紫 今その水が目に浮び、 じつと涙に濡れました。 ああ夏が来た、夏が来た。 二人の画家とつれだつて、 君と私が Amian の 塔を観たのも夏である。 二度と行かれる国で無し、 私に帽をさし出した お寺の前の乞食らに 物を遣らずになぜ来たか。

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