夏の朝

与謝野晶子

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どこかの屋根へ早くから 群れて集り、かあ、かあと 啼いた鴉に目が覚めて、 透して見れば蚊帳ごしに もう戸の外は白んでる。 細い雨戸を開けたれば、 脹れぼつたいやうな目遣ひの 鴨頭草の花咲きみだれ、 荒れた庭とも云ふばかり しつとり青い露がおく。 日本の夏の朝らしい このひと時の涼しさは、 人まで、身まで、骨までも 水晶質となるやうに、 しみじみ清く濡れとほる。 厨へ行つて水道の 栓をねぢれば、たた、たたと 思ひ余つた胸のよに、 バケツへ落ちて盛り上がる 心丈夫な水音も、 わたしの立つた板敷へ 裏口の戸の間から 新聞くばりがばつさりと 投げこんで行く物音も、 薄暗がりにここちよや。

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