女(『晶子詩篇全集』収録・同題第1篇)
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女、女、
女は王よりもよろづ贅沢に、
世界の香料と、貴金属と、宝石と、
花と、絹布とは女こそ使用ふなれ。
女の心臓のかよわなる血の花弁の旋律は
ベエトオフエンの音楽のどの傑作にも勝り、
湯殿に隠りて素肌のまま足の爪切る時すら、
女の誇りに印度の仏も知らぬほくそゑみあり。
言ひ寄る男をつれなく過ぐす自由も
女に許されたる楽しき特権にして、
相手の男の相場に負けて破産する日も、
女は猶恋の小唄を口吟みて男ごころを和ぐ。
たとへ放火殺人の大罪にて監獄に入るとも、
男の如く二分刈とならず、黒髪は墓のあなたまで浪打ちぬ。
婦人運動を排する諸声の如何に高ければとて、
女は何時までも新しきゲエテ、カント、ニウトンを生み、
人間は永久うらわかき母の慈愛に育ちゆく。
女、女、日本の女よ、
いざ諸共に自らを知らん。
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