巴里雑詠
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巴里の宿の朝寝髪、
しろい象牙の細櫛で
梳けばほろほろ、あさましく
昨日も今日も落ちること。
君に見せじと、物かげに
隠れて梳けば、わが額の
鏡にうつる青白さ。
身のすくむまでうら悲し。
巴里の街の橡の葉は
はや八月に散りかかる。
わたしの髪もこの国の
慣れぬ夜風に吹かれたか。
いいえ、それとも、憎らしく、
しろい象牙の細櫛が
鑢となりて擦り切るか。
恋を貪るこらしめに。
または悲しい人の世の
命の秋の入口に、
わたしも早く著きながら、
真夏の花をまだ嗅ぐか。
梳けばほろほろ、堪へかね、
昨日の恋が、今日の血が、
明日の夢が泣きじやくる。
からんだ髪を琴にして。
心ひとつは若々と、
かをる油に打浸り、
死なぬ焔を立つれども、
ああ灰のよに髪が散る。
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