雪の朝

与謝野晶子

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夜が明けた。 風も、大気も、 鉛色の空も、 野も、水も みな気息を殺してゐる。 唯だ見るのは 地上一尺の大雪…… それが畝畝の直線を すつかり隠して、 いろんな三角の形を 大川に沿うた 歪形な畑に盛り上げ、 光を受けた部分は 板硝子のやうに反射し、 蔭になつた所は 粗悪な洋紙を撒きちらしたやうに 鈍く艶を消してゐる。 そして所所に 幾つかの 不格好な胴像が どれも痛痛しく 手を失ひ、 脚を断たれて、 真白な胸に 黒い血をにじませながら立つてゐる。 それは枝を払はれたまま、 じつと、いきんで、 死なずに春を待つてゐる 太い櫟の幹である。 たとへば私達のやうな者である。

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