不調子

北原白秋

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われは見る汝が不調、――萎びたる瞳の光沢に、 衰の頬ににほふおしろひの厚き化粧に、 あはれまた褪せはてし髪の髷強きくゆりに、 肉の戦慄を、いや甘き欲の疲労を。 はた思ふ、晩夏の生あつきにほひのなかに、 倦みしごと縺れ入るいと冷やき風の吐息を。 新開の街は鏽びて、色赤く猥るる屋根を、 濁りたる看板を、入り残る窓の落日を。 なべてみな整はぬ色の曲……ただに鋭き 最高音の入り雑り、埃たつ家なみのうへに、 色にぶき土蔵家の江戸芝居ひとり古りたる。 露はなる日の光、そがもとに三味はなまめき、 拍子木の歎またいと痛し古き痍に、 かくてあな衰のもののいろ空は暮れ初む。

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