沈丁花(連作『顔の印象六篇』第4篇)

北原白秋

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なまめけるわが女、汝は弾きぬ夏の日の曲、 悩ましき眼の色に、髪際の紛おしろひに、 緘みたる色あかき唇に、あるはいやしく 肉の香に倦める猥らなる頬のほほゑみに。 響かふは呪はしき執と欲、ゆめもふくらに 頸巻く毛のぬくみ、真白なるほだしの環 そがうへに我ぞ聴く、沈丁花たぎる畑を、 堪へがたき夏の日を、狂はしき甘きひびきを。 しかはあれ、またも聴く、そが畑に隣る河岸側、 色ざめし浅葱幕しどけなく張りもつらねて、 調ぶるは下司のうた、はしやげる曲馬の囃子。 その幕の羅馬字よ、くるしげに馬は嘶き、 大喇叭鄙びたる笑してまたも挑めば 生あつき色と香とひとさやぎ歎きもつるる。

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