たはれ女

北原白秋

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『やよ、しばし、 そのうつくしきわかうどよ、 君はいづこへ。』『君は、など。』 『美男、あはれ、いつの日か 君に見えけむ。』『しかはあれ、 われはえ知らず。』『さな去にそ、 その御瞳のうつくしさ、 いかで忘れむ。』『さあれ、など、』 『まづ、おきたまへ、原のぬし?』 『いな、』『さは知りぬ、蜂須賀の 君か。』『いな、いな。』『ほ、ほ、さても、 御歳は。』『十九。』『はしけやし、 法科のかたか。』『いな。』『いなと、 さらばいとよし。さて、君は いづこへ。』『麻布、君は、また。』 ほほ、わすられぬ情人を 招ぎに。』とばかり、かたへなる 自働電話の火のとびら たわやに開けて、つと入りぬ。

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