冬の朝

千家元麿

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今年になつてから珍らしい寒さだ。 雲が多いので日が未だ地上に屆か無いのだ。 雀までも巣から飛び出さないのか聲がしない、 いつも勉強の納豆賣ももう通つてしまつたのか、 こつちが寢過したのだ。 起きて見ると日はもう登つて居るので、 凍え死んだ樣な雲がだん/\色づけられて、 漸つと動き出す地上ではところどころでずるい雀の聲がする、 人間は午後からのすばらしい天氣を見越して 生きかへる樣に喜び、 珍らしい寒さを元氣づいた聲で口々に語り合つて居る。 その内に雲はすつかり蘇生して 旅を續けて何處かへ滑つて行つて仕舞ふ 霜に飾られた木々の梢が、濃やかにぼかされて 雀は屋根の上に飛び出して來て揃つて啼き出す 啼く音がだん/\高くなる。 家の中は人が居なくなつたやうに靜かだ。 寢飽きた赤ん坊が床の中で一人言を云つて居る (一九一六、一二、二二日)

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