空中の詩

千家元麿

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今日は久しぶりの天氣だ。 だが風が冷たい。一月二月頃の風のやうだ。 どこかで凧をあげてゐないかと思はれる。 久しぶりに子供を連れて散歩する。 原に行くと、遠く富士とその連山が見えた。 目に見えぬ風は空中に滿ち、雲は皆んな動いてゐた。 冷たいけれど、ぢつとしてゐると日は暖く、 凡てのものがそのまゝに生きた詩だ。 自分の心は透明になつて空中に聳える高い富士や その他の山々の姿を恐ろしく感じた。 道へ出れば、 小學校がへりの子供が、二人、三人づゝ組んで、 何か聞え無いが話し合つて來た。一人が聞き一人が饒舌つて 女許りの群が通つた。一人は母親らしく二人は※妹らしく、 一人は子供を脊負ひ夫の噂をして通つた。 もう再び歸つて來無いものゝやうに 羽の薄い蜻蛉が羽だけ光らしてとんで居た。 外氣の中に一日を過せば自分は幸福だ。 空中に見えるものを見れば自分は敬虔の念に打れる。 (十一月五日)

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