雪の日

千家元麿

タグを編集・提案

作品の主題・モチーフなど、対象に固有の情報を登録してください。年代・形式・表記・文学運動などの共通分類は登録できません。会員タグの追加と、正式タグの削除は、5人の支持で自動反映されます。

ログインするとタグの追加・削除を提案できます。

今暫らく往來は靜かだ。 雪は止んでゐる 人が泥濘を氣をつけ乍ら ゆつくりと歩いてゐる 向ふからこつちへ來る人の行き惱んだ姿と、 自分の足下をかはり番に見乍ら 前の泥海を越すのに弱つてゐる。 道の上にはあつち、こつちに一杯の人だ 後向きの人や前向きの人が傘の下で横肥りにひろがつて動いてゐる。 小さい小豆色の洋犬が首を前へ垂れて、 後ろ足をぬかるみに引張られて歩きにく相に道を横切つてゆく、 友達を訪ねてさん/″\朝から遊び散らしてくたびれたと云ふ恰好だ。 町の角には傘をさして小供をおんぶした 女が家から出て嬉し相に見てゐる 脊中の小供に顏を横向きにして話してゐる。 人の居無いところは靜かで不氣味だ。 空は何か含んだ樣にうす暗い 然し往來は面白い、 通る人々は普段見られ無い情熱が透いて見える 日暮れになると町の樣子が變つて來る 雪は盛んに降つて來る 空氣が冷たくなり、濃くなつて來る 眼に見える樣に光つて往來を流れ出す その中を人通りが盛んになる。 町の景色はリズムを生じて來る。 行き交ふ人は寒さと雪に景氣をつけられて興奮して通る 雪は濃厚の空氣の中に 風が無いので一直線に降りて來る 一緒にかたまつて降つたり 一片一片妙にゆつくりと 重たい空氣にのつかつて落ちて來る 顏を目がけて飛んで來て眞直ぐに足下へ落ちて消えてゆく 降つても降つても往來ではぬかるみへ靜かに消えてゆく、 輕く、淡く、重く 鼻の先や眼の先きを 見えたり隱れたりし乍ら人々の行き交ふ中に降つて來る。 往來はます/\ゴタついて混亂の美を呈し 空氣も嬉し相にそこだけ光つて流れる。 人が重り合つて行き來する。 (一九一七、二、二八、太洋の岸邊所載)

ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。

批評・感想 0

作品から読み取ったことや、自分の中に生まれた感覚をまとまった文章で残す場所です。

まだ解釈・感想はありません。

雪の日の談話

疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。

まだ投稿はありません。

話題を投稿する

雪の日に寄せられた作品

詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。

まだ投稿はありません。

この詩に作品を寄せる