野の花
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東白の
野べに生れて
朝露を
頬の上に置き
夕されば
地球の腕に
抱かれて
眠る野の花
唇に
誰かふれけむ
接吻の痕
微かにとめて
夕榮の
うつらふ丘に
紅を
含みて立てり
彷徊ひし
羊の群は
薄霧の
遠に歸りぬ
口笛の
鳴りしやいづら
花の野は
やゝに暮れけり
秀峰めぐる薄雲の
靜かに岫に歸る見て
われ露原に立ちし時
紫尾野の秋はつらかりし
汀に散らふ浪の花
白帆上げたる瀬越し舟
國府津の浦にわが立ちし
旅の情を忘れねば
星かすかなる中空に
あこがれたりしわが魂も
やさしき花を地に見て
新たに灑ぐ涙あり
北の光の野をかけて
輝きかへる雪の上に
凍りし花を春解かば
痩せたる巖も馨るらん
橋反らせけむ高樓の
甍くづれしバビロンの
大城の跡に咲き殘る
花の色こそさだかならね
珊瑚洋の島人も
花の環をつくりては
あからさまなる乳のしたに
錦の帶をまとひたり
ビヱンの湖の朝凪に
槎あやつる美人の
腕に佩べる珠鳴りて
匂へる花は胸の上に
咲きて散り、散りて咲く
野末の花のなつかしく
露にぬれたる秋の花を
渡殿朽ちし西の壺に
人の贈りし春の花を
蝦夷菊枯れたる池の畔に
褄紅の撫子は
露霜降りてめげたれど
名よ脆かりし虞美人草の
やがて媚ある花咲かん
眉秀でたる妹あらば
りぼんに揷すを惜まねど
紫菫、白薔薇
酷くは摘まじ苑にして
新たに歸ぐ町の子の
車に花は投ぐるとも
小坪に吊す花籠に
切りてさゝんはあたらなり
明星が岳に立ち迷ふ
雲に思ひの馳する時
曉くらく園に降りて
幽かに花の香を齅げば
深山の奧にひとりのみ
立つに似たる悲みは
忘るゝからにわりなくも
落る涙のとゞまらで
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