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与謝野晶子

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小高い丘の上へ、 何かを叫ぼうとして、 後から、後からと 駆け登つて行く人。 丘の下には 多勢の人間が眠つてゐる。 もう、夜では無い、 太陽は中天に近づいてゐる。 登つて行く人、行く人が 丘の上に顔を出し、 胸を張り、両手を拡げて、 「兄弟よ」と呼ばはる時、 さつと血煙がその胸から立つ、 そして直ぐ其人は後ろに倒れる。 陰険な狙撃の矢に中つたのである。 次の人も、また次の人も、 みんな丘の上で同じ様に倒れる。 丘の下には 眠つてゐる人ばかりで無い、 目を覚した人人の中から 丘に登る予言者と その予言者を殺す反逆者とが現れる。 多勢の人間は何も知らずにゐる。 もう、夜では無い、 太陽は中天に近づいて光つてゐる。

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