春の微風

与謝野晶子

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ああ三月のそよかぜ、 蜜と、香と、日光とに そのたをやかな身を浸して、 春の舞台に登るそよかぜ。 そなたこそ若き日の初恋の あまき心を歌ふ序曲なれ。 たよたよとして微触かなれども、 いと長きその喜びは既に溢る。 また、そなたこそ美しきジユリエツトの ロメオに投げし燃ゆる目なれ。 また、フランチエスカとパウロとの 額寄せて心酔ひつつ読みし書なれ。 ああ三月のそよかぜ、 今、そなたの第一の微笑みに、 人も、花も、胡蝶も、 わなわなと胸踊る、胸踊る。

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