大きな黒い手

与謝野晶子

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おお、寒い風が吹く。 皆さん、 もう夜明前ですよ。 お互に大切なことは 「気を附け」の一語。 まだ見えて居ます、 われわれの上に 大きな黒い手。 唯だ片手ながら、 空に聳えて動かず、 その指は じつと「死」を指してゐます。 石で圧されたやうに 我我の呼吸は苦しい。 けれど、皆さん、 我我は目が覚めてゐます。 今こそはつきりとした心で 見ることが出来ます、 太陽の在所を。 また知ることが出来ます、 華やかな朝の近づくことを。 大きな黒い手、 それは弥が上に黒い。 その指は猶 じつと「死」を指して居ます。 われわれの上に。

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