狂へる街

北原白秋

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赭らめる暗き鼻、なめらかに禿げたる額、 痙攣れる唇の端、光なくなやめる眼 なにか見る、夕栄のひとみぎり噎ぶ落日に、 熱病の響する煉瓦家か、狂へる街か。 見るがまに焼酎の泡しぶきひたぶる歎く そが街よ、立てつづく尖屋根血ばみ疲れて 雲赤くもだゆる日、悩ましく馬車駆るやから 霊のありかをぞうち惑ひ窓ふりあふぐ。 その窓に盲ひたる爺ひとり鈍き刃研げる。 はた、唖朱に笑ひ痺れつつ女を説ける。 次なるは聾しぬる清き尼三味線弾ける。 しかはあれ、照り狂ふ街はまた酒と歌とに しどろなる舞の列あかあかと淫れくるめき、 馬車のあと見もやらず、意味もなく歌ひ倒るる。

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